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[ 2016-09 -27 23:00 ]
「ストリート・オブ・クロコダイル」で一躍世界に知られた双児の映像作家クエイ兄弟。
彼らが製作しているのはストップモーションアニメーションの作品。
日本でいうと、人形アニメ、クレイアニメなど、もっぱらお子様向けの作品が多いけれど、
彼らの作るものは子供向けのものではなく、
一節の詩や、短文、絵、音楽、また、アウトサイダー芸術などからもインスピレーションを受けて制作された独特な表現の世界。
彼らが敬愛するというチェコの芸術家ヤン・シュヴァンクマイエル氏も、
社会主義国だった当時のチェコで集会や発言、活動が制限されていた中で、
人形や人物を交えてのストップモーションアニメーションの作品を制作して世に発信していた。
制限があったからこその表現方法だったとはいえ、直接訴えるよりも深く広く、
本来の人の生きる有り様を観る者に実感、痛感させていたのでは。。。
なので、娯楽というよりも思想、哲学性の高い芸術作品だけど、もちろん、シニカルにも愉快にも笑える娯楽性もあって、
新作が発表されるのがいつも待ち遠しいくらい。
クエイ兄弟の作品は、そんなヤン・シュヴァンクマイエルや東欧の芸術作品の影響を受けたという背景もあるけれど、
彼ら独特の世界観と細部にこだわる映像美に観る者を圧倒する。
館内には、クエイ兄弟が撮影で使用したデコール(撮影セット)が置かれている。
「ストリート・オブ・クロコダイル」の仕立て屋のシーン(冒頭のチケットの写真に使われているもの)。
下は、「ヤン・シュヴァンクマイエルの部屋」のもの。
ネジ釘のサビホコリ、文字、人形の造型のこだわりが隅々にまで見てとることができる。
人形の入ったセット=デコールは思いのほか小さなもの。
こんなサイズのものを撮影して作っていたとは思えないくらい。。。
鉛筆で描かれた絵画や直筆のタイトル文字など素晴らしくて。
最初はクエイ兄弟はヨーロッパの出自だと思っていたら、アメリカのフィラデルフィア出身というから驚いた。
アメリカにこんな芸術家が存在していたなんて、といったらアメリカに怒られるかな。。。
でも、きっとティーン時代は苦労したんじゃないかと想像もしてみたり。
(作品活動はイングランドに移っていたそうなので、ちょっと納得。)
フィラデルフィア出身といえば、デヴィッド・リンチも思い出す。
あの街の景観や雰囲気が彼らのような芸術家を生み出すのかな。
クエイ兄弟の鉛筆画とリンチの絵画が何処か同じエッセンスを感じたりもするのだ。。。
これはクエイ兄弟が来日した際に、この会場でライブ製作したという作品。
粉末化した牡鹿のムスクが中央のドームガラスの中にあるという。。。
クエイ兄弟の作品に度々登場する牡鹿。
牡鹿のムスク工場の跡に建てられた執事を育成する学校を描いた実写(?)作品、映画「ベンヤメンタ学院」にも、牡鹿のモチーフが沢山。
彼らがの映画をもう一度観返さないといけない、と思った。
昔見たインタヴューで二人は話すときに、「I am・・・」(一人称の私)ではなく、「We ・・・」と話すのを見た。
これほど一心同体の一卵生双児の彼ら自体が芸術作品のようにも感じる。
幾つかの映像の上映もあり、クエイ兄弟の作品好きなら必見の展覧会だろうと思う。
でも、展覧会場の殆どの展示物が、
作品上映、または演劇上演時の写真(!)だったりするので、そこはとても残念。。。
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