江戸期の藍染め大麻布 

ゴリゴリ麻、という麻生地がある。

普通、麻というとリネン、亜麻だけど、

日本古来からの麻は亜麻ではない。

”アサ”と呼ぶのがいいのかもしれない。

長い繊維が取れる植物なら、何でもなめして糸にして、

手織りして着物や日用の布に変えなければならないほど、

大昔の日本では糸も織り布も貴重だったという。

なので、”アサ”と呼ばれる布は、

様々なものがあるようだ。

和紙に使う楮(こうぞ)やカラムシと呼ばれる苧麻も、

葛の布も、藤の木の樹皮の繊維をなめした藤布、

しなの木の繊維のしな布も。

また、和紙そのものも布にした、長門という布もある。。。

そんな中、最も重宝されたのが、

おお麻の繊維から作った大麻布と呼ばれるもの。

現代では”ヘンプ”と呼ばれる大麻草の繊維を糸にして織ったもの。

厳しい環境でも大きく育つので、

東北地方で綿花の栽培が気候に適さず難しい土地では、

もっぱら大麻布が衣類や日用の布として活躍していた。

第二次大戦後に栽培を禁じられてから、

衣料品の素材として殆ど国内市場から消えてしまった。


薺nazunaを始めた頃、骨董屋さんでこの布に初めて出会って、

風合いと手触りに心を奪われてしまった。

ゴリゴリ麻、と聞いて手に入れたものの、

栽培された土地の気候風土にもよるのか、

色んな手触り、色んな織りのものに出会ってきた。


糸を績んで手織りして、紺屋と呼ばれる藍染め専門の職人に

染めをお願いしたり、

または自家用で藍染するのが通常のようだけど、

ある時、全く染めていない生成の大麻布の反物に出会ったことがあった。

それが「南部麻」というものだと教えられ。。。


この手触りこそ、まさに私が一番最初に出会った、

あのゴリゴリ麻の染める前のものなんだ、と思った。


南部というのは、今の青森県の南津軽、

南部地方で織られた大麻布、ということなのだそう。


それ以来、同じ大麻布でも、

東北の中でもそれぞれに手触りが違うような感じもするし、

繊維のなめし方、糸の績み方、

織り手によっても違うだろうし。。。

同じくおお麻の繊維で織った”対馬布”もある。

九州、対馬地方で織られた今では完全に廃れてしまった布。

東北や南部麻が藍染めの無地なら、

対馬布は縞の柄に織り上げる。

糸を生成りのものと、藍の濃淡に染め分けたもので縞を織る。

東北の大麻布は藍染一色の上から、

細かに白い糸で刺し子して紋様を描いていく”こぎん刺し”。


どれも美しい古来からの布。


ただ、何も飾らない、無地のままの、

使い込まれた藍染の大麻布が、

まるでビンテージデニムのように、

ところどころに色枯れや褪せ、穴の繕い跡などのある、

そんな大事に使われた痕跡のゴリゴリ麻に、

なんとも言えずに魅了されて。。。


薺 nazunaを始めてから、少しずつ見つけてはカタチにしてきた。

どこへ行けば必ずある、というものでもなく、

初めてゴリゴリ麻のことを教えてくれたお店の方も、

「もう、あれは無いね。殆ど見かけなくなった」と。

見つけたら取っておいて、とお願いしていたら、

「これで最後かな。もう、これだけのものは出てこないと思う」

と出してきてくれたのが、江戸末期のものだという。

(画像は後日アップします。。。)


穴が幾つも開いた布は、半纏を解いたもののよう。

そこかしこに、当て布した繕いのあとも。

これほどのダメージと大穴が幾つも空いても尚、

解いて、補修して当て布して繕って、

また仕立て直そうとしたものなのか。

もっともっと繊維がトロけて着物に縫えなくなったら、

夜具、そして敷布、そして雑巾になっていったのかもしれない。


貴重な大麻布。

これを手に入れた当時、一度洗ってつづらに仕舞っておいた。

ハサミが入れられるようになったら仕立てよう、

それまでは、と。。。


そろそろ、仕立てる準備が出来た、という自負もある。

畳んで仕舞っていた大麻布=南部麻を、

たっぷりの水に浸す。

わずかに泥の残ったような江戸期の古布を、

もう一度ざぶざぶと何度も洗う。



大昔の泥は本当に美しい橙色のような土の色と、

芳香と呼びたいような、何かさわやかな香りがする。

現代の泥は、ガソリンやオイルの混じった真っ黒な泥だから、

純石鹸では簡単に落ちないと思う。

洗って濯いでいるうちに、フレッシュな藍染めの香りが漂ってくる。


こんな大麻布にはなかなか出会えない。



そして、こんな大麻布を是非とも袋物に仕立てたいと思う。。。















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by nazunanet | 2018-02-01 21:24 | 布のこと | Comments(0)

「袋もの屋 薺nazuna」と「nazuna_antique」作家兼店主の日々のあれこれ。布のこと 麻のこと Antique FOOD 古道具 手仕事する人々のこと 


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