2017年 12月 06日
考察 ツイン・ピークス THE RETURN SEASON3 最終話18話
(ネタバレな記述もあるので、これから見るよと言う方は要注意。。。)
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怒濤の最終回を見終わって。。。
(長文です。。。)
ああ~~~っ、やっぱり、そう来たか、
そう来るよね、デヴィッド・リンチだもん。。。
”マルホランド・ドライブ”や”ロスト・ハイウエイ”、
あの超難解とされる”インランド・エンパイヤ”だって見て来たわけで。。。
今になって”砂の惑星”や”エレファントマン”を見ると、
「この頃はエンターテイメントしてるなあ」と思う。(笑)
初期作品からして娯楽作品を作るような映像作家ではなかったけれど、
年を経るごとにますます作品性の強い映像作家へと。。。
でも、他の作品よりもツインピークスはかなり観客を意識して作っていると思う。
脱力ギャグネタも満載だし、アンディ&ルーシーのゆるゆるな癒しシーンも、
緊迫するシーンの合間合間に妙な塩梅ではさまっていて、
「ここ、笑いドコロだよね」と思わず確認せざるを得なくなる。(笑)
リンチ演ずるゴードンがアルバート捜査官を
イライラさせようとしているとしか思えないシーンがおかしい。
勿論アルバート氏はポーカーフェイスで「それが何か?」的な佇まいなんだけど、
長い長い無音の間(ま)のやりとりも、
合間合間にリンチ好みの妖艶女優を登場させてくるのも、
結構笑いドコロでツボにはまる。
アルバートが初対面の検死官の女性とパブで食事するシーン。
あのアルバートが初めて楽しそうに笑って女性と会話している。
25年前のツインピークスを通して観てもそんな一面を見せたのが最初で最後。
珍しいやら微笑ましやらで、むちゃくちゃ笑ってしまった。
(作中のゴードンとタミーと同様に)
今年一月にアルバート役の俳優さんが亡くなったというのも悲しかった。
ツインピークスファンを楽しませてくれていた俳優さんらの
相次ぐ訃報も寂しい限りで。。。
もう少し早く続編をやって欲しかったけど、
前作の劇中でローラが「25年後に。それまでは。。。」といって終わっていたので、
これは約束が果たされたんだから感謝しなくては、とも思う。。。
シーズン3が始まってから、毎週楽しみで。
普段は邦画も洋画も連続ドラマものは殆ど観ないので
こんなに見入るのは珍しいくらい。
最終話の18話があっという間に近付いてくるのに、
バラ撒かれた謎が解けて行く気配が一向にない。
一体、どうなる!?
というハラハラドキドキの最後の3話はいきなりジェットコースターの乱高下。
そして最終話のエンディングになり、完全に終わってしまったんだ、
と理解した瞬間の、なんともいえない気分。
楽しいハローウィンパーティーの最高潮で
「はい、お開きね」と照明を蛍光灯にパッと変えられたような、
「ええーー!、まだ終わって欲しくないよー!」
と駄々っ子が家に連れて帰られてしまうような。。。
何でも大団円、ハッピーエンド、因果関係が結末で
誰もが分かるようにクリアにされるハリウッド映画に慣れていると、
「あれはどういう意味なの?!なんだったの??」と、
ハテナのマークが頭の上に幾つも浮かぶ作品は、
観客が抱く葛藤が凄まじいような気もする。。。
幾つもの疑問の何もかもが、
ありきたりのハッピーエンドや大団円で
満足して麻痺している”消しゴム頭”たち(笑)を、
デビッドリンチが「面白かったかい?」と
赤いカーテンの部屋で微笑んでいるような気もする。
ストーリーの謎が解き明かされるか否かで
作品の善し悪しを判断することは出来ない。
作品を観終わって、観客それぞれが胸に得難いような感情が
沸き起こることの稀有さ、もの凄さ。。。
人にそんなエモーショナルな揺さぶりを掛けられる魔法を持っている才能。。。
(勿論、バイオレンスや官能など生理的に単純なエモーショナルは論外。。。)
つまらないドラマや映画は、じっくり観ようたって無理なわけで、
ましてやそんな得も言われぬ感情や葛藤を
何日も抱き続けるなんて起りっこないんだから。。。
やっぱりリンチはスゴイんです!
とはいえ、一緒に観ていたダンナさんはそんなにツインピークスファンでもないし、
それほどリンチのファンでもないので、
シーズン3の長々とした意味のないようなシーンが堪え難かったようではある。。。
私はピークスマニアなので、「これは笑いドコロだなあ」とか、
色んなシーンに出て来る名前や数字、
場所などの意味づけを考えて何度も何度もシーンを反すうしてしまう。
そういう謎解き好きを刺激してくれる面白さでもあり、
(スッキリとした正解があるわけでも無さそうなんだけど)
ツインピークスやリンチ全般の作品ファン&マニアからすると、
かつお節を与えられた猫状態になっているわけで。。。
映像だけでなく、絵画や家具を製作したり、
コーヒー(!)をプロデュースしたりする多才なリンチは、
映画というツールでも登場人物や設定、場所、ストーリーなど全ての素材を、
最初の脚本から解体させて組立て直して、
時に主人公を話の途中で別人で演じさせたり、
時間の流れも順行ではなく、逆行、追憶と現実、妄想と夢の狭間に行きつ戻りつし、
時代設定はおろか、舞台となってる場所を国さえも
気付かないまま変えられてしまったりもする。
「だまし絵」を観ているつもりが
知らない間にその中に入れられてしまってるような、
エッシャーの描く、永遠に辿り着けない階段を、
ひたすら登り続けているような感覚。。。
絵画のキュビズムで対象の解体と再構築がキャンバス上で行われたように、
リンチは映像という手法の中で、その物語の時間軸と空間と人物の成り立ち、
または過去、記憶の解体と再構築を繰り返し、
決して閉じない無限の世界へ誘われる。。。
まさに最終話こそ、登場人物何者かの願望か妄想か、
夢か現代のアメリカを現わす姿なのか。。。
これまでも赤い部屋や過去の回想シーンで、
ローラのつんざくような絶叫のあと、必ず大展開が起ったことを考えると、
あれはまた違う場所への転回が起る前触れだったのか、、、。
直前に聴こえたサラの「ローラ~」と呼ぶ声が怖い。。。(ひえー)
考えてみれば、闇の存在キャラたちは赤い部屋へ緑の指輪で強制召還されると
炎に灼かれて燃えてしまうけど、
あのリーランドは燃えてなかった!
ラスボスはサラ・パーマーか。。。
でも、圧倒的な闇の存在”ジュディ”というのは誰なのか。。。
オデッサのカフェの名前は「ジュディ」だった。
店の奥にいた老夫婦。。。
その老婦人の顔が、過去の映像に出て来たあの少女にそっくりだったんだけど。。。
物の怪じみた虫が眠る少女の口の中へ入っていった恐ろしいシーン。
あの少女はサラだったのかな、と思っていたけど、
ジュディのカフェにいたおばあちゃんの顔が特徴的な少女の顔に酷似してて。。。
あの老婆がジュディなのか。。。
うーーむ、謎は深まるばかりです。。。
オタク度全開のニッキになってしまいました。
観てない人にはチンプンカンプンな世界だけど、
興味ある方はリンチワールドを是非旅して欲しい。。。
・・・続編、あるような気もするけど、製作サイドは視聴率次第で決めるのかなあ。。。