猫と出会う その2

前回からの続き。

部屋に勝手に入ってくるトラジマ猫は、

その後も家に帰ったら遊びに来ていてくつろいでいたり、

夜中に布団に寝に入って来たりしていた。

今思うと不用心だったなと思うけど、

お風呂場の窓は全開しない窓だったので、

ちょっとの隙間なら大丈夫と思っていたし、

人懐っこい猫なので、どこか近所で飼われてるんだろうなと。


その日は凍えそうに寒い夜だった。

水が流れる音がしてふと目が覚めた。

とめどなく流れる水の音。

なんだろう、台所の蛇口を閉め忘れたかなと思ったけど、

すぐ間近で聞こえてくる。

ジャー、ジャー、と勢いのある水が流れ出る音は何だろう。

おもむろに起き上がって部屋の電灯をつけたら、

なんと、トラジマ猫が私の掛布団の上に乗っかって、

ずうっとションションをしているではないですかー。

掛布団の上は湖のようになっている。

「ひゃ、ひゃー!」

声にならない悲鳴を上げて、私は掛布団をお風呂場に持っていって、

水で洗い流したけど、トラジマくんはオス猫だったので、

鼻がちぎれるくらいの物凄いオス猫のおしっこ臭が。

トラジマ猫は私の慌てぶりに驚いて、さっさと窓から退散。

びしょびしょで悪臭の掛布団なしで、寒い夜を過ごし、

翌朝、布団を袋に入れて、部屋を飛び出し、

布団を担いでダッシュでクリーニング屋さんへ。

いつものクリーニング屋のおじさんは、「どうしたの?」と袋を見た。

私は「あの、掛布団を洗ってほしいんです。

おしっこが。あっ、私がやったんじゃないんですよ」

「猫が、猫がやったんですから!」と必死で言う私を横目に、

笑いながら布団を袋から出して「はいはい。・・・あっ!猫だね、これは」

「すごいね。参ったなあ。こんなの他のと一緒に洗えないよ」

「そこを何とかお願いします。この冬に掛布団なしになっちゃうんで」

「しょうがないなあ、そしたら水洗いで丸洗いしておくよ」

と渋々引き受けてうれたクリーニング屋さん。

今考えても申し訳なくて。若気の至りというやつで。。。


勿論、我が家には猫のトイレを置いてないし、

トラジマ猫はあまりの寒さに外へ出て用足しに行くのを面倒だったのか、

外に出れなかったのか、

湖のようになってたのを考えると、必死で我慢してたのかな。


その後はそういうことがあったので、トラジマ猫はしばらく現れなかったし、

わたしもちょっと懲りてしまったので窓を開けたままにはしなかった。



それからずいぶん経ったある日、

外出先から帰って、お風呂場のドアが開いていたのを見て、

窓を少し開けたまま出かけていたことを思い出した。

玄関から部屋に入って仰天した。

部屋中、泥棒が入ったみたいにめちゃくちゃになっていて、

壁に掛けていた服やバッグが散乱して、どれもビリビリに裂かれている。

棚の上の置物やテーブルもすべて横倒しになって、

割れたり、破れたり、丸まったり、とにかくめちゃくちゃなのだ。


テーブルの上に置いてあったはずの、

数日前、北海道の友人からのお土産のカワハギの燻製が、

ビニールから引っ張り出されて無くなっている。

そして床に落ちていた一番の私のお気に入りのコートの上には、

何かドロドロしたものが。。。

「ひゃ、ひゃーー」

またしても悲鳴。

窓から入ってきたトラジマ猫が、

匂いで魚の燻製を見つけて全部食べてしまって、

その後、気持ち悪くなって暴れ回って吐いたたみたいだった。

全部食べたら、そりゃあ、苦しくなるよ。

テーブルに置いたままで窓を開けていた私が悪かったのか。。。



部屋中の片づけと幾つもの私物がゴミと化し、

なけなしで買ったお出かけ服も台無しになって、

(もうクリーニング屋さんを頼れなかった。。。)

どうにも悲しくなった。


でも一番悲しかったのは、

その日を最後に、

トラジマ猫は私の部屋に来なくなってしまったことだった。




猫と出会う、はまだまだ続く。。。

(追記;当時、自分の部屋は二階にあって、

このトラジマ猫とは他の場所で一度も見かけたことがなかった。。。

何故、私の部屋にやってきたのか、今も不思議でならない。)




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by nazunanet | 2017-06-16 00:35 | | Comments(0)

「袋もの屋 薺nazuna」と「nazuna_antique」作家兼店主の日々のあれこれ。布のこと 麻のこと Antique FOOD 古道具 手仕事する人々のこと 


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