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「白の刺し子 カンタ」 望月真理さんの仕事

今月25日、友人と自由が丘の岩立フォークテキスタイルミュージアムへ。

カンタ刺繍作家の望月真理さんの講演とワークショップに。 

カンタ刺繍、というものを初めて目にしたのは、十数年前。

上野桜木にあるインドの手仕事に溢れた

ウエアやストールなどを製作されている「アナンダ工房」だった。

そこで目にしたインドの布は、極細番手の糸で手織りされた絹や木綿の布ばかり。

当時、巷に溢れていた派手な色のインドの布ものとは全く違ったものだった。

そこで、黄金の繭から紡がれる自然のままの黄金の絹、ムガシルクというのも初めて見た。

薺nazunaを始める前の頃、布というものに興味を持ち始めて、

色んなものを見聞きしたい欲求に駆られて様々に歩き廻っていた頃だった。

そこで見せて頂いたのはインドの職人さんの丁寧で緻密な仕事ぶり。

あまりの細かさに感嘆したものだった。

上等の絹布に、絹糸で動物や花々を刺繍して、

その周りや空白の地の部分もビッシリと細い絹糸で地刺しされた生地。

それが「カンタ」というもので、これほど手の込んだ手仕事がインドの技なのだ、と

感動すら覚えた記憶がある。

世界中に刺繍や刺し子など、布と糸の手仕事があるけれど、

中でも、日本の東北の「どんさ刺し」とインドの「カンタ」に、グッとくるものがあった。

規則的に布の目を数えて刺す刺繍や刺し子の美しさにも感動するけれど、

自由に刺していく、技法や手法、

こうしなければいけない、というルールのない刺し子が

「どんさ」だったり「カンタ」だったりする。

布の補強や魔除けなど、生活に密着して生まれたのが漁師の「どんさ」刺し子だとしたら、

カンタは日常のものとは違う、ハレのものであり、作り手の芸術作品に他ならない。

世界中の貴重な布の芸術を蒐集、展示、保存されているミュージアムの

オーナーのお話しがまた深い。。。

「カンタが誕生したインドのベンガル地方は、貧しく苛酷な土地。

なのに、他のどの土地にも生み出されない芸術が生まれる場所。

気候も良く、心地よく、満たされた場所からは芸術は生まれようがない」と。 

インドの名も無い女たちが

どれほどの年月を掛けて生み出したのか計り知れない「カンタ刺繍」。

生まれた娘が嫁ぐ日のためになのだろう。

そこには、極楽図とも言えるような美しい世界が一面に、様々に糸で描かれている。

ボロボロになったサリーやシーツ、日用の布を重ねて糸で刺しただけのものなのに、

見た瞬間に、感嘆とワクワクとした喜びが胸に溢れてくる。

特に、このミュージアムで目にした古いカンタの縫い糸の軌跡は、

布と渾然一体となっていて、見るものを驚愕させること間違いなし。。。。

巷にカンタ刺しの布が溢れているけれど、本物はこんなにも繊細で緻密。

今はインドでも「カンタ」を生み出せる人はいなくなっているのだとか。


「白の刺し子 カンタ」 望月真理さんの仕事_d0221430_18570091.jpg

望月さんは、そんな手仕事大国のインドから「カンタ」の教えを請われているほど。

90歳を超える高齢にもかかわらず、糸と針の仕事は続いていく。

望月さんの作品は布から糸から全て手で触って探しながら、

一日一日少しずつ縫い続けて生み出される宝石。

「布の目を数える刺し子や刺繍だったら出来なくなっていたかもしれない」とおっしゃる。

技法もルールもなく自由だから続けられる、と。

私が「どんさ」や「カンタ」を見た瞬間に惹かれたのも、

「こうしなくちゃいけません」とか「このように目を数えます」とかのルールの枠がなく、

刺繍の動物や花たちの表情がユーモラスで、

目立たないように刺した地の色と同じ糸の地刺しに愛情を感じたのかも。

早速帰宅してから、ありあわせの布に糸でカンタをしてみたものの、

何度も何度も解いては縫っての繰り返し。。。。

「まず、やってみる。やってみないと、何も分からない」

望月さんの言葉が何度も耳にこだまする。

やってみて凄さが分かる。困難さが分かる。途方もない手仕事なのだと分かる。

やってみて、分からないことがいっぱい出て来る。

ため息をつきつつも、何かワクワクがとまらない。。。

白い布、生成、キバタの布が好きな私に、

「白の刺し子、カンタ」の展覧会とワークショップに

声を掛けてくれた友人に感謝しなくては。。。

ここで昔のインドの女性たちが生み出した作品を間近で見て、

また、望月さんが製作された作品を直に手で触れ、

お話しをお聞きすることが出来たのは、

(自分自身の経験がまだ年浅いとしても)布に携ってこれた者にとって、

本当に宝ものを頂いたような気がします。

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by nazunanet | 2017-04-30 19:02 | art、 music,movie,etc | Comments(0)

「袋もの屋 薺nazuna」と「nazuna_antique」作家兼店主の日々のあれこれ。布のこと 麻のこと Antique FOOD 古道具 手仕事する人々のこと 


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