人気ブログランキング | 話題のタグを見る

竹橋・東京国立近代美術館へ「熊谷守一 生きるよろこび」展へ

09. 師走(FRI) 晴れ

竹橋の美術館へ「熊谷守一展」へGO!


竹橋・東京国立近代美術館へ「熊谷守一 生きるよろこび」展へ_d0221430_19541965.jpg

初期からの作品が展示されているので、

晩年のあの画風になっていく過程を見ることができる。

光が後ろから当る、逆光での光のラインが

あの赤い線で表わされていたんだなと分かる。


暗闇の中に浮かび上がった女性の屍「轢死体」の絵。

その後も何度も登場するモチーフ。

目の当りにした人間の死、肉体、魂、魂の容れ物としての肉体。。。


実子の死にも何度も遭遇し、その死を描くことの苦悩。

それらの思いなどが吐露された記述。

その後、晩年に暮らした木造屋の庭で、生き物、雨、猫を写していく守一。

猫をことさら可愛がっていた様子が、絵に現れている。

竹橋・東京国立近代美術館へ「熊谷守一 生きるよろこび」展へ_d0221430_19540479.jpg

 

初期の作品の綿密な絵から、晩年の赤い線で輪郭を描き、

単純化、まるで記号化されたような絵へと変っていく。

単純化された絵だけど、何度もスケッチを繰り返し、

何度も繰り替えし同じモチーフを描き続ける姿勢。

そのこだわり。

庭を観察し続けての有名な言葉、

「蟻は左の2番目の足から歩き始める」

どれだけ観察しても、それを見つけられるのは至難の技。

水たまりに落ちる雨の雫がはねて王冠をつくる様子を、

(ミルクが滴り落ちて、ミルククラウンが出来るような)

高速度カメラでスローモーションを撮影したような絵を描いている。

単純化された絵だとしても綿密なスケッチを何枚も繰り返したであろう、

その絵からは、雨粒が落ちて跳ねる様子がまざまざと感じられる。

 

海岸線、砂浜、海、動物、蛙、猫、シンプルな輪郭線、

少ない色数の中でも、選び抜かれた色と、

丁寧に塗り重ねられた画面は眺めるだけでも心地よい。


辛い経験や戦争の只中でも病で外へ思うように出かけられなくても、

身近なものを対象に、生き物、いのちの本質を描き続けた守一。


丁寧に描かれた輪郭線が、どこかミッフィーの面影を感じてしまった。。。

PCで簡単にトレースするイラストレーターが多い時代に、

丁寧に丁寧に筆で描くブルーナさん。

印刷する上で、指定した色が正確に表現されるように、

色数と種類を決めて組み合わせながら制作していったブルーナの絵と、

光と影を追い求め、光の輪郭線を描き続けた熊谷守一の絵。

スラスラッと適当に描いたのでは決して出来ないラインと色。

心和むという点で、猫やカエルや蟻などの小さな生き物たちを描いた絵を見ているうちに、

ブルーナさんの絵をちょっと彷佛としてしまった。

 

生前の守一の私物が公開されていた中で、

光を照らすためのランプなどの他に、

ネジや金具や豆電球などが雑多に入った箱もあった。

私の道具箱と全く同じようなものが展示されていて、何か親近感さえ感じてしまった。

 

我が家のベランダの小さな植木鉢の野花や水盤、

そこへやってくる小鳥たちの観察の楽しさを知っているので、

守一がどれほど嬉々として蟻やカエルや猫たちを描いていたかが分かる。。。

自宅アトリエの美術館にも足を運んでみたい。。。

 

美術館の所蔵品展示の会場も見に行く。

つくづくと、日本の洋画の画壇の主流が

海外の有名画家の影響が多大なんだなと。。。

オリジナリティを追求している画家の多くが、

派閥や画壇から抜け出しているのでは、とも思う。

権威あるところから認められてデビューも出来るし、注目も受けるし、

また仕事としても成り立って行くのだろうけど、

芸術家としての制作と、

ビジネス的アート制作は別のところにあるんだろうな、と思ったりも。。。


竹橋・東京国立近代美術館へ「熊谷守一 生きるよろこび」展へ_d0221430_19543251.jpg

 

 

”眺めのいい部屋”から皇居の森を臨む。

展示会場を後にして、ギャラリーショップでポストカードを選ぶ。

猫絵のカードはコレクションにしている。

ポストカードはよく使うけど、猫カードは使えない。(笑)



P.S.

東京国立近代美術館。2階に”ミクニ”のカフェがあったけど、早々に営業終了になっていて、

展覧会を廻って喉がカラカラなのに他にドリンクコーナーも無く。。。

冷却水で飲むのも何だか。。。

そこかしこに結構広々としたスペースがあるのになあ。

バチカンの美術館でさえ、気軽に利用できる学食のようなカフェテリアがあったのに、

最近の都内の有名美術館や博物館のカフェは、

色んなニーズに向けて作ればいいのになあ、と思う。

ランチやティータイムを悠々と優雅に過ごせるカフェと、

学生さんや子供連れの家族が気軽に利用できるカフェ。

両方があったら、もっと外国人観光客もやって来れると思う。

東京は外国や地方にくらべると何でも割高傾向にあるし。。。

どこも”ハコもの”は立派だけど、

ゆったり心地よく過すための何かが大いに足りない。。。

”おもてなし”とは何ぞや、などと思いつつ、会場を後にする。(笑)

 

どこかで休憩したいけど、美術館を出たらあまりに殺風景で

憩いの場所があるとは思えない。。。


ふと、毎日新聞社が目に入った。

あのビルに行ってみるべし。

中に入ったことはないけど、思いのほか飲食店が並んでいる。

ファスト系のカフェも幾つかある。

ふと、スタバを覗くと店じまいかと思うほどお客さんがいない。

椅子もソファー席も選び放題。

ウチの近所に3軒~4軒もスタバがあるのに、これまでどこも座れたためしがない。

それなのに。。。ここは穴場なのかも。。。


美術館や博物館を廻って、見た感想などを話しつつ、

ゆっくりくつろげるってイイね。

そんな場所が、”ハコもの”の中にもっとあったらいいのにね。。。


名前
URL
削除用パスワード

※このブログはコメント承認制を適用しています。ブログの持ち主が承認するまでコメントは表示されません。

by nazunanet | 2018-02-13 20:04 | art、 music,movie,etc | Comments(0)

「袋もの屋 薺nazuna」と「nazuna_antique」作家兼店主の日々のあれこれ。布のこと 麻のこと Antique FOOD 古道具 手仕事する人々のこと 


by nazunanet
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31